私はUberに乗ると、結構運転手とおしゃべりすることが多い。
自分が行ったことのない国から来た人たちがどんなふうに生きているのか興味があるし、面白い話を聞くことが多いから。Uberは多少の稼ぎにはなるので(誰かがフルタイムでやって月額2000ドル程度なので儲かりはしない、とは言ってたけど)、色んな人が運転している。女性も男性も、白人も黒人も移民したてホヤホヤな感じも。
私の勝手な印象では、エチオピア人とエリトリア人は日本人のタクシー運転手みたいに丁寧で静かで礼儀正しい。あとは色々。でもアジア人の運転手は少ないかな。コロナ前には、Uberにカラオケシステムをつけて、一曲歌っていきな!と言ってきたおっちゃんもいた。アフリカのどこかの国(メジャーじゃない国だったが忘れてしまった)の人は、自分の国では、2階の窓からキリンが首を突っ込んでのぞいてくるようなこともあるって言ってた。漫画みたいやん。
さてと。
先日はなんか気のいい八百屋の兄貴みたいな黒人でドレッドヘアの人が喋りかけてきた。目がキョロキョロっとして、大きな口でにかぁっと笑ってる。
彼は、トーゴ出身だそうな。
アフリカの後頭部って感じの場所だね。

まだアメリカにきて3年目で、なかなか海外暮らしはキツいとのこと。同じ国の仲間は半年で無理と言って帰ってしまったんだそうな。そうだよね。母国を出て遠くの国で暮らすっていうのは、どこの国の誰にとっても、やっぱり厳しい面はあるよね。黒人だと差別もあるかもしれないしね。
でも、自分は兄貴が飛行機のチケット買ってくれてここまで来てるから、頑張るんだ、と言ってる。そうか。そんな殊勝な兄貴がいるとは君もラッキーだね。お母ちゃんは、兄貴が弟を送り出しちゃって、寂しくないんだろうか。うちは・・・正直、とても寂しそうな顔をしてた瞬間を見てしまった気がしたし、やっぱり近くにいた方が嬉しかったんだろうな、という気がしている。トーゴの母ちゃんは、大丈夫なのかな。と思ったので、「兄弟は何人いるの?」と聞いてみた。
そしたら何て言うたと思います?
「22人」
ですってよ!!
え?は?22人も兄弟がいるの?どうやってお母ちゃん産んだの!?
と聞けば、
「いや、父には9人の妻がいるからさ」
ですと!!!
えええ… うーん。そうなると平均的には妻一人に対して2.5人の子供ってことになるから、子沢山なんじゃなくて、妻が多いだけか。
「ヴードゥー教だから、一夫多妻制なんだ。」
え!ヴードゥー教って、なんか昔遠くの国の山奥でそういう宗教があった的な存在だと思ってたよっ!人形に釘刺すやつじゃないの?実在して今でもやってるのか!!
「こんなの普通だよ。うちの大統領は99人妻がいたと思うよ。」
えええ(ちなみに99人ていうのは確認できなかったが、あまり信ぴょう性はない気がする)。
でもさ、兄貴。女って、か弱くないの知ってた?物理的な筋力・腕力がないだけで、女の方がかなり強いと思うよ。そんなのが9人も家にいるんでしょ?お父さん大変だね。と言ったら、「うん、それ(女の方が強いってこと)、知ってる🤣」と仰る。実際9人もいれば、年中誰かはPMSでイラついてるだろうし、女子同士のいざこざもあるだろうし。
そうか、じゃぁまぁ、お母さんもあんまり寂しくないのかな。
「それがさ、うち、兄弟みんな海外暮らしでさ。7人は欧州、3人はカナダ、4人はアメリカに住んでるんだ」
はあぁ!?
じゃぁ、兄弟の22人中、14人が海外移住組ってことじゃないですか。
海外移住が大変って言っても、兄弟に会いに行けるし、兄弟のところに転がり込むこともできる。母国語がイマイチ出てこなければ、英語とか日常的に使ってる言語に切り替えても話ができる。移住がどういうことかもわかってる兄弟がいる。なんだよ、だいぶ私とは環境が違うじゃない。
そしてお母ちゃんにはまだ6人は国内組の子供が残ってるってことだね・・・
「だからね、誕生日はあんまり大事じゃないんだ。22人分覚えられないし。自分も9番目から11番目の子供なんだけど、何番目だったのかはっきり覚えてないんだよね🤣」
あらまぁ。
まぁ、確かに22人もいたら、全員の名前覚えるのすら大変だよな。それに全員結婚して、相手の家族がいたりしたら、もう親戚の数だけですぐに数百人はいくだろうなぁ。結婚式とか、親戚だけで十分大変だよ。

でもさ、兄貴。アメリカでは基本的に一夫一婦制だと思うよ(モルモン教は違うって聞いたことあるけど)。国に帰った方が、奥さんたくさん作っても良いから楽しいんじゃないの?と聞いて見たら「あははは、そうだね。自分は一人で良いや」ですと。で、チラッと私の顔見て結婚してるのか聞いた後で、
「強い女を奥さんにしたいんだけど、どうしたら良いと思う?」
と聞いてきた。知らんがな・・・まぁでも。
「強い女は弱い男を相手にしたいとは思わないと思うよ。だから君が強くなることが大事なんじゃない?」
と答えておいた。『Date-onomics(デートノミクス)』という、アメリカの男女のデート状況を経済学的に分析した本でも、女性は自分と同等かそれ以上の学歴の男子を望む傾向にあるって書いてあったから、あながち間違ってはいないと思う。
「優しさが強さだよ。」とも添えておいたけど。筋肉バカになるのが良いと言ってるわけじゃないからね。まぁ、彼ならわかるんじゃないかという気がしたので説明しなかったけど。
強い女をご所望の男性に会うことはなかなかない(が、いないことはない)ので、面白かった。きっと彼と彼の兄弟たちが見ている世界や人生観は、私とはずいぶん違うんだろうと思う。家族観も違うだろうし。でも国連に集まって、世界の平和をどうするか議論するときは、こういうぜんっぜん違う人生観の人たちと、「平和とはどういう状況を指すのか」「差し当たりどうすべきか」を議論し、妥協ラインを探り、自分の国の方針に投票してもらうように裏で駆け引きしたりしなきゃいけない。日本の価値観が世界の価値観では、全然ない(むしろ、日本は色々とマイノリティだと思う)。
いやー。
価値観なんて色々あるんだってことくらいこの歳なら知ってますけれども、やっぱり実際には、肌感覚として「どれだけ違うのか」の理解度はまだまだ浅いな、この地球上にも十分、知らない世界が広がってるんだな、と改めて思ったのでした。
兄貴にはぜひとも、頑張ってアメリカ生活を乗り切り、お望みの強い女を妻にしてほしいですね。